■ 分解から統一へ(2021年4月6日) ■


□ 近況報告 □

今年3月にも書きましたヴァイオリンの奏法等に関する「新しい発見」が、今でも頻繁に続いております。この数ヶ月間に起ったことは、進歩というよりは昆虫の完全変態に近いものがあります。ただ私の場合は順調に羽化するのではなく、何度も何度も metamorphosis 別のかたちの蛹(さなぎ)になる ”変な虫” のようです。

ロンドンで私が初めて習った「ヴァイオリン・メソッド(奏法)」は、極めて明確に細分化された理論でした。例えば左手に関して言えば、楽器と手の位置関係をわかりやすく言いますと、ある部分の音域は建物の地下一階に当たる手の位置で、中間部は地上1階、そして高音域は2階で、みたいな(こうは教わりませんでしたが、説明のためこのような表現をしております)、また右手(弓使い)に関しても同じで、弓のある部分には腕のある特定の部分を、別の部分で弾くときは腕の別の部分を使うといった具合に、複雑に「分解」したメソッドでした。

そのメソッドが「オールド(古い)・ヴァイオリン奏法」であったことがわかった時から研究・探求し続けて試行錯誤を繰り返し毎年のように独自に開発してきた奏法は、いずれも無意識のうちにこれらの『土台』の上に作り上げられたものでした。

しかし今回は、様々な要因(例えば2019年1月に右肩の異常<腱板炎と骨棘>により奏法を変更せざるを得なくなったことに始まって、2021年に入ってから立て続けに様々な発見があったことなど)のお蔭で、この最初に習った『土台』を根本から変更することに成功致しました。

これは例えるなら、これまで私が毎年のように行ってきた奏法改善は家のリフォームのようなものだったのに対して、今回行ったのはまるで建物を完全解体した後、その土地も深く掘り起こして全く新しい基礎を作り直したかのようです。

すなわち、無意識に引きずっていた複雑に細分化された「分解」メソッド からより単純な全体的「統一」メソッドに「完全変態」したような感じです。変更の成果が音質や安定性の変化として直ちに現れるため、その都度それまで使っていなかった筋肉の筋肉痛には堪えつつも極めて意欲的に楽しく取り組むことが出来ております。

もちろん、(習ったことを非難するのではなく、あくまで私には合わなかったという意味で)『悪い癖』を直すには相当な意思力と忍耐と時間が必要で、変更したものがしっかり定着するまで困難と試行錯誤が続くのですが、これまで行ったことのない手や腕の使い方で新たに筋肉(と脳)が開発されていく感じなどは、なかなか面白いものです。

何事も、自分の頭で考えながら道を切り開いていくというのは楽しく、生きがいを感じるものでございます。また、一旦本格的な演奏活動を始めてしまった後だったらここまで徹底した「基礎解体工事」はほぼ不可能でしたので、タイミングにも感謝です。


□ 健康維持に役立つ習慣のご紹介 □

私の場合、週6日間は一切妥協のない厳しい練習を行いますが、残りの1日は「5Rs」(= Relax・Refresh・Rest・Recover・Recharge )を心がけております。この5Rsは、そのようなある日の入浴中、湯船の中で完全リラックスRelax)を心がけていた時に思いついてまとめたものです。

週6日間練習前に行う清掃とは別の掃除(ローテーションを組んで毎週行う「中掃除」と呼んでおります)は結構な肉体労働ではありますが、自分の居住空間を極めて清潔に保つのは私にとってはリフレッシュRefresh)であり、またヴァイオリンを弾く時に使う筋肉を休ませるRest)ことによって回復Recover)し、この1日は普段と別のこと(中掃除など)を行うという「気分転換」を持たせることで次の週への充電Recharge)をすることにより、新しい週を新鮮な気持ちで頑張り抜くことが出来ます。

私はこの「5Rs」習慣のお蔭で、日々のトレーニングで身体にかなりの負担がかかっているにも関わらず、極めて良好な健康状態を保つことが出来ております。現在のご時世で燃え尽きそうなほど無理を重ねて頑張っておられる方もいらっしゃるかもしれません。この中の一つだけでも、この記事をお読み下さった方のお役に立てることがあれば幸いです。


冬が長い北海道も近くの河川敷では一斉にふきのとうが芽吹いて、自然の息吹の力強さを感じさせております。厳しい雪国の冬を耐え抜いて芽を出した新緑の、長く待ちわびた太陽を喜ぶようにみずみずしく輝く美しさは格別でございます。それでは皆様も萌えいづる草木のようにどうぞお元気でお過ごし下さい。 butterbur scape


伊藤光湖


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