■ 被災者が「古着」で傷つかずに済む方法(2019年
10月23日) ■


災害の度に繰り返される事柄の中に「古着問題」があります。(「第二の災害」とも呼ばれております。)

被災された場合、自分が被災したということをなるべく考えないようにして身を守っている方が多いと思います。そんな方達がご自分の「被災」を強く思い知らされるのは、実は「被災しなければ受けるはずのないご親切」によって、「自分はこのご親切を、不平不満を言わずに受け入れなければならないような『立場』になったのだ」と感じる瞬間なのです。この心理は、「現場」を体験した方にしか恐らくわからないことと存じます。

(一つの例として、私共の実家の火災後、ご厚意によって「古い物(廃品)」がたくさんあるところに連れて行っていただいたことがありました。そして、そこでご親切によって「食事」をいただいたのですが、その1/4が腐敗しておりました。かなり迷ったのですが、私はどうしてもそれを飲み込むことが出来ず、結局吐き出してしまいました。しかしそれは大きな罪悪感となって私を襲うこととなります。「被災した人間がご厚意で恵んで下さった有り難い食べ物を、腐っているからといって吐き出すとは何事か」これは被災していない方には理解出来ない心理かと存じますが、被災しますとどんなことでも有り難く受け入れなければいけないような心理状態に追い込まれるものなのでございます。そして、その腐敗した食べ物と、周りを取り囲む全てどこか壊れたゴミだらけの廃品の中で、私は心の底から「自分は被災したのだ」ということをひしひしと思い知らされました。)

自然災害などで被災された方は、それまで住んでいた家が急に住めなくなったり、大切なものを失ったりしたことによる多大なる精神的ダメージを受けておられます。その「精神的ダメージ」に対する理解と感覚のずれが、この毎回必ず起きる「古着問題」の根本原因かと思われます。

被災されていない方に、この「自分が被災したということを深くえぐるように現実を突きつけてくるものによる精神的ダメージ」を理解するのは恐らく不可能かと思われますので、この古着問題がなくなることは多分ないと思います。従って被災された方がさらに傷つかずに済むためには、1)自分が被災しないと被災者の精神的ダメージは理解不能であるということを認識する 2)送られてきた古着に関しては、『家の後片付けの時服が汚れるので、極端な場合は「使い捨て」として使えるようにという意味で』親切な方が善意で送って下さった、と思えば傷つかずに済むのかもしれません。

一日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。


伊藤光湖


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